「乱読の読書会」では、毎月参加者の方々に月間ベスト本を紹介していただいています。月に10冊以上の本を読む方々ということもあり、どれも読み応えのある本ばかりです!!せっかくなので、その中から一部をピックアップしてこのホームページで紹介していきたいと思います!
乱読のセレンディピティ
今回紹介するのは、2019年7月の会で私が紹介した本「乱読のセレンディピティ」(扶桑社)です。ある意味で、この読書会のコンセプトにも直接関わっている本であり、私自身も非常に大事にしている価値観が書かれている一冊です。
この本の筆者は外山滋比古さんという大学教授の方で、ベストセラー書籍「思考の整理学」の著者の方でもあります(余談ですが、この本は1986年出版のかなり前の本ですが、今でも古臭さのまったくない非常におすすめの一冊です)。その他にも、創造や思考についての本を色々と書かれており、その中の一冊がこの「乱読のセレンディピティ」。
この本の主な主張としては、新たな創造や思いがけない発見(セレンディピティ)を見つけるためには、特定の分野に閉じこもることなく、様々な分野を幅広く学ぶ必要があるということ。そのために重要なのが、タイトル含まれている「乱読」という読書スタイルだというわけです。
内容
「BOOK」データベースより
一般に、乱読は速読である。それを粗雑な読みのように考えるのは偏見である。ゆっくり読んだのではとり逃すものを、風のように速く読むものが、案外、得るところが大きいということもあろう。乱読の効用である。本の数が少なく、貴重で手に入りにくかった時代に、精読が称揚されるのは自然で妥当である。しかし、いまは違う。本はあふれるように多いのに、読む時間が少ない。そういう状況においてこそ、乱読の価値を見出さなくてはならない。本が読まれなくなった、本ばなれがすすんでいるといわれる近年、乱読のよさに気づくこと自体が、セレンディピティであると言ってもよい。積極的な乱読は、従来の読書ではまれにしか見られなかったセレンディピティがかなり多くおこるのではないか。それが、この本の考えである。
読書をありがたがってはいけない
読書についての本は数あれど、この本で特徴的なのは、読書をむやみにありがたがってはいけないという主張をしていることです。読書論を展開する本ではその効用や読書の重要性が説かれていることが多いなか、この本の主張はなかなか奇抜だと言えるでしょう。
もちろん、読書について書いている本である以上、本を読むことそのものを否定しているわけではありません。本文から引用すると、「問題はどう見ても、生きる力とは結びつかない、知識のための知識を不当に喜ぶ勘違いである」ということであり、「本をありがたがって、読みすぎると、心が近眼になって、ものがよく見えなくなる」というのが主な論点です。
個人的に非常に印象的になっている文章は「読書がいけないのではない。読書、大いに結構だが、生きる力に結びつかなくてはいけない。新しい文化を創り出す志を失った教養では、不毛である」という文章です。今も色々と本を読んでいますが、常に意識したい心構えです。
乱読と乱談
では、どのような読書が理想なのでしょうか?それに対する回答こそが「乱読」です。狭い分野に閉じこもってじっくり読書をするのではなく、「風のごとく」好奇心に導かれるままに乱読をすることこそが新たな発見に不可欠であるというわけです。失敗を恐れず覚悟を持って乱読をすることが非常に重要であると筆者は説きます。
更に、この本の中では「乱談」の効用についても解説されています。一人で考えるだけでなく、複数人で雑談をしているなかでこそ面白い創造が生まれるという発想は、私自身がこの読書会でやりたいこととまさに通じていると言えます。
乱読と乱談。なかなか着目されることのない視点を提供してくれるという意味で、おすすめの一冊です!